集中講義1.携帯端末系開発

Lesson 2.ワン切りについて '01/12/11

☆ 11月30日 わんことは?

 わんこと言われても、わん公(注:犬のこと)か、わんこそばぐらいしか思いつかない、やねうらおだが、今日は毎日放送からわんこの取材だったりする。ちゅーか、税務署に出さんとあかん経理の書類作成作業がまだ終わらんねん!わんこは、損金不算入なん?とかわけのわからんことを口走りながら、もう頭のなか、ごっちゃなってるねん!さくらたんハアハアとか収録のときに叫んでしまわないか心配である。てかまたそのオチかよ。 ―――掲示板より

⇒ OnAirは、12月5日の毎日放送「Voice」でした。顔出しでした^^; なかなか、いい感じになってました(笑)

さてさて、このわんこ(=携帯電話にダイアルしてワンコールで切る=ワン切り)が社会問題となっているのを受けて、やねうらおもプログラマーとしてテレビの取材を受けました。別に、やねうらおがそういう業者では無いので誤解なきように(笑)

それで、このテレビで放映された内容を、うちの掲示板でよく書き込みをしてくれてはる、某情報機関(笑)の祐作さんが反訳してくださったので、ちょっと引用しながら、この問題について考えてみたいと思ったりします。

三澤「コマーシャルの後の特集は必見です。今問題になっている『ワン切り迷惑電話
』の取り立ての実態を追いました」
ナレーション「携帯電話が1回だけ鳴って切れる。こちらから相手にかけ直すと、い
かがわしい電話につながり、多額の金を請求される。そんな『ワン切り迷惑電話』が
激増。その取り立ての実態……(取り立て電話の音声が流れる)。日本中で毎日何十
万件もかけられている迷惑電話。その謎の仕組みを『VOICE』のカメラが解き明かし
た」

(コマーシャル)

橋本「特集です。きょうは最近にわかに問題となっている『ワン切り』という迷惑電
話を取り上げます」
三澤「『ワン切り』というのは、携帯電話を1回だけ鳴らして、相手に電話番号を知
らせるというものなのですが、これを悪用した商法が最近急増しているわけです。相
手が誰かはっきりわからないまま、ワン切りで着信した電話番号にかけ直してみると、
伝言ダイヤルですとかツーショットダイヤルに誘い込むような電話サービスにつなが
ります。その後に、高額の利用料を請求されるというものなのです。このワン切り商
法の実態、徹底取材しました」

業者の取り立て電話「えーと、これ、10月の24日になるんですけれど、ツーショット
ダイヤルを、お客様の携帯電話のほうが会員登録されてるんですが……使ったものは
払っていただくというのが、普通どこの世界でも共通していることなんで、お客様の
記憶になくても、こちらのほうで、お客様が当時ご利用いただいたという記録も残っ
てますし……今回のご精算金5140円でございますから、140円がお客様が利用された
金額なんですけれど、5000円というのはこれは会員登録料でございますんで、これは
支払い期限が1日でも過ぎてしまいますとかかる料金でございますから……(以後も
ナレーションのバックで流れ続ける)」
ナレーター「この人は、大阪市内に住む23歳の男性です。このところ何度も何度も繰
り返し、料金の取り立て電話がかかってきます。相手は伝言ダイヤルの業者です。業
者は『10月24日に有料サービスを利用した』と言いますが、男性には身に覚えはあり
ません」
業者の取り立て電話「……これは正当なものをあなたに請求しているのであって、不
当なものを請求しているつもりは毛頭ないですから……だから結局、払いたくないわ
けでしょ」
男性(電話で)「払いたくないとかじゃなくて、かけた覚えがないんです」
ナレーター「男性に思い当たることがあるとすれば、業者が言う時期に、06で始まる
番号が、自分の携帯にかかってきたことです。男性は何だろうと思い、見慣れないこ
の番号にかけ直しました」
男性(電話で)「だから、ワン切りでかかってきた電話にかけ直したんです」
業者(電話で)「そういったことはやってませんよ」

男性「普通に電話がかかってきて、すぐ切れたんで、仕事先からの電話かなと思って
かけ直したんですけど。そしたらツーショットダイヤルのほうにかかったらしく、テ
ープが流れて『ようこそ』みたいになったんですけども。……それから1週間か2週間
して電話がかかってきて『料金が支払われておりません』と。ちょっと怖いですけど
も」
ナレーター「この男性のように、見知らぬ電話番号から携帯電話に『ワン切り』の着
信があり、こちらからかけ直してみると、伝言ダイヤルやアダルトダイヤルに誘い込
む電話につながった『ワン切り迷惑電話』は、先月から急激に増えています」

(街頭インタビュー)
男「なんかありますね。同僚もそんなん言うてましたね。出会いのガイダンスが流れ
出して、勝手につながって、慌てて切ったと言ってましたけどね」
女「ありますよ」
インタビュアー「ありましたか。それ、かけ直しました?」
女「いや、怖いからかけ直してないです。いたずらにしてはひどすぎますよね」
ナレーター「インターネット上では『ワン切りの電話にこちらからかけると10万円の
請求がくる』といううわさも出回り、一般の不安に拍車をかけました」
女「10万円かかるやつですか。転送メールできた、それ」
女「社内でも『注意するように』という……」
ナレーター「いまのところ、10万円もの取り立てを受けたという相談は、各地の消費
者生活センターにはありません。しかし、冒頭の男性のように、取り立てを実際に受
けた場合、払う必要はあるのでしょうか」

(大阪府生活相談センターの坂井照夫事業課長へのインタビュー)
坂井「有料情報サービスを利用する気がまったくなくて、取引先なり友達からかかっ
た電話かなと思ってリダイアルしているわけですから、錯誤に陥って利用したという
形ですから、錯誤無効を主張しまして、請求を拒否することが一応可能です」
ナレーター「昼夜を問わず大量にかけられているワン切りの迷惑電話。そのしくみを、
ついにつかむことができました。わずか20行足らずの単純なプログラム。これが、お
びただしい数の迷惑電話を生む『ワン切り電話』の元です」

(磯崎やねう企画代表取締役へのインタビュー)
磯崎「通信ソフトでプログラムが書かれているわけなんですけど、通信ソフトを使い
慣れている人なら、5分くらいあればできるでしょう」
インタビュアー「電話代……なにかお金はかかりますか」
磯崎「相手が受話器を取ればかかると思うんですけど、おそらくワンコールでは取れ
ないと思いますんで、そういう意味ではいっさいお金はかからない……」
ナレーター「(パソコンのディスプレーが映し出される)異なるふたつの電話番号を
入力すると、パソコンがその間の番号すべてに、次々と電話していきます。かかる時
間は、1通話3〜4秒です。」
インタビュアー「(プログラムを動作させるとまもなく携帯電話が鳴る)わ、なるほ
どこれで着信あり。確かに切れますね」
磯崎「1日2万件くらいかけられるでしょうね」
ナレーター「パソコン1台でかけられる迷惑電話、1日2万件」
磯崎「まあこれ自体、迷惑防止条例とかで取り締まっていただかないことには、個人
レベルではどうしようもないですものね。かかってくるものですから。1分間に何十
か所以上はかけられないとか、そういう規制のしかたはできますね、NTT側で」

ナレーター「そもそもこうした大量の『ワン切り電話』をかける業者を、電話会社は
規制できないのでしょうか」
NTT担当者「私どもお客様にですね、電話のサービスをきちっと提供する義務がある
んですね。片や憲法等で、通信の内容を見てはいけないという『閲覧の禁止』という
項目があるんですよ。ですから、いかに大量に迷惑な発信をされているお客様がいら
っしゃっても、私どものほうで、それを取り締まる、規制するということはできませ
ん。今の時点では、法にもそういう規制の項目がないものですから、自衛していただ
くしかないかなと……」

三澤「まあ要するに、電話会社は打つ手がないということなんですね」
橋本「『迷惑ワン切り電話』に関する問い合わせというのは、電話会社に毎日1000件
以上もあるということなんです。業者への何らかのいち早い対応が、国にも電話会社
にも求められています」

だそうです。しかし、この最後の部分のNTTの担当者の返答っておかしいと思うんですよ。

そもそも、1分間にかけられる回数を制限しても、憲法にある「閲覧の禁止」には抵触しません。ひと昔のモデムにはアクセス制限機能(同一番号には、5分間に何回かしかダイアルできない)があったと思うのですが、あれと同じですから..。

そうなってくると、チケットとるために、リダイアルボタンを連打してはる人とか困るように思うかも知れませんけど、あれも違うと思うんですよ。話中ならば、自動リダイアルする機能をNTTが用意すべきなんですよ。「現在話し中ですので、自動リダイアルしております」ってね。そして、接続は、キュー管理(待っている人のリストを待っている順番に記録して管理して、話中が解除されたら、その待っている人に接続する)するんです。私に言わせれば、手動リダイアルって、いつの時代の接続形態を踏襲しとるねん!ヽ(`Д´)ノ って感じです。

などと祐作さんと話したら、祐作さんからは、

ご指摘の通りですね。現在のシステムでも、同一番号へのリダイヤルとワン切りは容
易に区別できるでしょう。私もこの部分が引っ掛かりましたが、取材の前後関係やス
タッフの分担などがあって、やねさんのアイデアをみかかに伝えられなかったのでは
ないかと勝手に納得しました。

キュー管理はいいアイデアですね。でも、人気アーチストのチケット販売か何かでキ
ューがパンクしそう(笑)。まあ回線が輻輳するよりはマシですか。

とお褒めの言葉をいただきました。

余談ですが、このキューで待ってる人のリストが表示できて、こいつとこいつは無視とか、こいつだけ通話開始とかそういうことまで出来れば、WinMXみたいですね(笑) キューで待ってる人に「お前むかつくあかんべー」とかインスタントメッセージ送ってキューから外したりして..^^; いや、それは冗談ですけど。

ちなみに、あの私が書いていた、わんこのプログラムは、取材のため、サンプルとして秀Term Evolutionで書いた15行程度のマクロです。もともと、通信ソフトはどこかのアクセスポイントにダイアルして、接続して使うものなので、ダイアルする機能等は、基本機能として備わっており、たった15行程度で次々と番号順にダイアルしていくプログラムが書けてしまうわけです。

まあ、それはともかく、このようなワン切りによる勧誘(?)が増えてきた背景には、スパムメールに対するdocomoの規制強化があります。11月中旬以降、スパムメールを送信すれば(大量に宛先不明のメールが含まれている場合、スパムと判断され)docomoから契約プロバイダへ通知され、プロバイダから解約を言い渡されてしまいます。これにも、実は抜け道があるんですが、ここに書くと実際にやる業者が出てくるといけないので書かないことにします。ともかく、スパムメールを送りにくくなった業者が次の手段をひねり出してきた、というところです。

しかし、このワン切りは、メールを受信するだけで料金がかかるということで社会問題になったスパムメールとは問題の位相が微妙に異なる気がします。ワン切りはこちらは、かけなおさない限り料金はかかりません。しかし、一日に何百回もワン切りされたら、携帯電話としての本来の役割を果たさなくなってしまいます。そういう意味では、携帯電話というシステム全体に壊滅的ダメージを与える可能性をも秘めています。

余談ですが、15年ぐらい前に、デーモンダイアラーというソフトがありました。一定周期ごとに自動的に指定された番号にかけて、一定回数ベルを鳴らして切る、というものです。いま秀Termのマクロで書くならば、数行でしょうけれど、プログラムの行数がどうとかより、私はその発想が凄いと思いました。当時、番号拒否とか出来ませんでしたし、番号通知機能もありませんでしたから、不気味な電話が四六時中かかってきて、電話が使い物にならない、うるさくて仕方が無い、いらいらする、腹立たしい、それでいて相手は1円もかからないという、非常に迷惑ないたずらが流行りました。ワン切りも、これに似ている気がしてなりません。個人レベルではどうしようも無いのです。迷惑防止条例による取り締まり強化や、今後のNTTの動向に期待したいと思います。


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